竹内院長に聞く
今受けてほしい
AMH検査の重要性
1980年鹿児島大学産婦人科入局後1985年学位取得。1989年米国で最初に体外受精を成功させたイースタンバージニア医科大学Norfolk、Jones生殖医学研究所に留学。体外受精と不妊治療の基礎研究を行い、 1992年米国初の着床前遺伝子診断の成功に寄与する。 またその間の業績が認められ、2回のアメリカ不妊学会賞を受賞する。 1992年帰国後 医療法人仁知会 竹内レディースクリニック 院長に就任。同時に姶良本院において高度生殖医療センターを併設し、国内初の着床前遺伝子診断に成功するなど最先端の治療を続けている。 近年はメディア等を通して「AMH検査」や「卵子凍結」について啓蒙活動も行っている。 さらに、昨年9月に竹内レディースクリニックART鹿児島院(分院)を設立し、鹿児島から世界基準の医療を目指している。
インタビュアー 先生が不妊治療に着目したきっかけを教えてください。
竹内院長 鹿児島大学入局当時、不妊治療の施設がなく体外受精や不妊治療は浸透していない時期でした。全国的に見ても鹿児島は保守的な地域性で妊娠しないのは全て女性のせいにされ、男性はまず検査に来ないという風潮がありました。そういった状況を変えるため大学病院内に不妊治療の施設を自身で立ちあげ、南九州で初めて体外受精を成功させました。
インタビュアー アメリカに留学されていますが、日本とはどのような違いがありましたか。
竹内院長 1989年に不妊治療の権威である米国Norfolk、Jones生殖医療研究所に留学し着床前診断の研究を行いました。
アメリカでは自分の子供が遺伝病だった場合、次の子供に遺伝病が出ないように着床前診断(妊娠する前に受精卵の段階で流産などの異常がわかる検査)が開発されました。辛い経験をしたお母さんが堂々とTVに出て自身の体験を語り、着床前診断の必要性を訴えることが多々ありました。
また予防医学が進んでおり、学校では性教育もしっかり行われていて「AMH検査」や「卵子凍結」についてもアメリカの女性は知っていました。保守的な日本とは違い、思考も先進的な国であると感じました。
インタビュアー 日本へ帰国後はどのようなことに取り組まれたのですか。
竹内院長 1992年に父の急逝によりクリニックを継ぐため帰国。着床前診断の技術を日本に持って帰ってきました。
受精卵のうちのいくつかは年齢が高くなってくると流産しやすくなります。せっかく妊娠したのに流産は辛いですし、そういう経験を減らせる可能性を持っている着床前診断を日本で広めたい。そんな強い思いがありました。
これは日本で初めての試みであり、学会の理解を得るため鹿児島の大きな会館で講演を行いましたが、優性思想と誤解され一部の団体などから批判的な意見が相次ぎ治療がとん挫してしまいました。
それから30年程度経過してやっと認められるようになってきましたが、残念ながら未だに保険適用外のため自費での治療となっています。
また女性の身体についてきちんと知って欲しいと啓蒙活動を行いました。女性の卵子の個数には限りがあり、生まれたときに約200万個の卵子を持っていますが、新しい卵子が作られることはなく減少するのみで、その減少スピードも個人差があります。卵巣年齢を知る検査(AMH検査)が日本で普及し始めたのが約10年前ですが、私がアメリカにいた頃には既に現地の多くの女性は知っていました。日本では学校教育でそういうことを教えていません。
かつてTV局のシンポジウムやセミナー、高校の養護教諭や校長先生に対し学校教育の必要性について訴えましたが、全く受け入れてもらえませんでした。
今こそ学校教育で教える必要があると思っています。
インタビュアー AMH検査はまだまだ知らない女性も多いかと思いますが、AMH検査の必要性について教えてください。
竹内院長 AMH検査は、卵巣に残された卵子の数の目安(卵巣予備能)を推測できる検査です。年齢とともに卵子の質は低下していきますが、AMH値が低ければ卵子の数が少なく、高ければまだ多くの卵子が残されていることになります。AMH値は3ヵ月程度は変わらないと言われているので3~6ヵ月おきに採血して卵子の減り具合を確認することも必要です。
これを知ることにより選択肢が広がり、将来の妊娠の可能性を残す「卵子凍結」を選択することができ、ライフプランの形成に役立ちます。
まずは自分の身体を知るということが大切です。
インタビュアー どういった方にこのAMH検査を受診いただきたいですか。
竹内院長 20歳以上の方にはぜひAMH検査を受けてみることをお勧めしますが、特に月経の周期が短いなどの月経不順がある、月経の量が少ない、また家族でこのような症状があるという方や、母親が早い年齢で閉経になった方は早く検査を受けることが大切です。
インタビュアー 「卵子凍結」をすることにより女性にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
竹内院長 海外では、リプロダクティブ・オートノミー (性や生殖に関する自己決定権)、プレコンセプションケア(女性が将来の妊娠を考えながら生活に向き合う)という考え方が普及しています。女性が自立し妊娠出産について自身で考え決めること、健康的な生活を送り元気な赤ちゃんを授かるチャンスを増やすこと、さらに女性や将来の家族がより健康な生活を送れることをめざせるということです。
今は子供をもうけたいパートナーがいない方やキャリアを積んできて仕事が楽しくなってきた方は、卵子凍結をしておけばいざ妊娠したいと考えたときに若い卵子で妊娠することが出来ます。
卵子凍結を選択せず自然にという考えもありますが、いざ結婚して子供が欲しいと思ったとき、ある程度年齢を重ねると妊娠しづらくなってきます。そうなると妊娠まで時間も要しますし、不妊治療には費用もかかります。
卵子凍結に早く取り掛かれば費用も少なく、妊娠するまでの期間が短くて済みます。なにより、焦りや不安といった心理的負担が軽減されます。
インタビュアー 心理的負担が軽減されるのは大きいですね。
竹内院長 子供をもうけられる全体数も変わってきますよ。
例えば卵子凍結を選択しなかった場合、40歳で初めて妊娠したら子供を授かるのは1人程度が限界。ですが30歳で卵子凍結をしていれば40歳でも30歳の卵子で妊娠できるため、短いスパンでの妊娠が可能で、また複数人の子供をつくることも可能です。過去に3人子供を授かった方もいました。
よかルートのサービスに
想うこと
インタビュアー ありがとうございます。私たち「よかルート」は女性の活躍が華々しい医療・福祉業界で人材紹介事業を展開していますが、もっと女性が輝ける場を提供したいと考えています。
竹内院長 最近では東京都が「卵子凍結」について助成金を出したり、福岡市がAMH検査費用の一部を助成したりと少しずつ広がりを見せています。しかし、まだまだ「卵子凍結」や「AMH検査」の重要性について知らない方が多いのが現状です。特に鹿児島は浸透が遅いように感じています。
よかルートは医療・福祉という女性が多い業界に特化しているのでこの発信が多くのみなさんの目に留まり、将来の妊娠とキャリアを考えるいいきっかけになってくれたら嬉しいです。
よかルートと一緒に啓蒙活動を行っていけたらと思っています。
これからも女性が活躍できる未来のためにぜひ頑張ってください!
インタビュアー
よかルート スタッフ 大村
今回お話をお伺いして、まずは「知ること」・「自身の身体と向き合う」ことが大切だと感じました。 私もAMH検査を受けて自分の身体と向き合ってみたいと思います!