茶農家の極み
こだわりの
霧島の有機茶

ヘンタ製茶有限会社様
代表取締役
邉田 孝一 様

二代目として1983年4月に就農され、41年間お茶の生産に携わっておられます。お茶は全て有機栽培で製造から煎茶、抹茶の原料になるてん茶の加工、販売まで一貫した体制を敷き国内はもちろん、海外への輸出にも注力されています。さまざまな世代にお茶に親しんでもらうため、飲むだけでなく身近に感じられる商品の開発を行っていらっしゃいます。

事業紹介

 1967年に霧島で10aの水稲と雑穀の複合経営でスタートし、94年に法人化しました。現在は25haでお茶を栽培して、茶葉を使用した飲料や菓子などの製造販売もしています。茶畑は霧島山麓の標高200~300mにあり山林に囲まれているため、ほかの農作物の農薬散布の影響がなく、病害虫の被害も少ないお茶づくりに適した環境です。2015年からは輸出も開始し、国内ではJR九州クルーズトレイン「ななつぼし」や星野リゾート「霧島 界」に提供しています。

過去にあった危機とその克服

 日本人の生活スタイルの変化とともに、若い世代を中心に急須で緑茶を飲む習慣が減少してきました。さらに1990年頃からペットボトル入り緑茶飲料が発売されると緑茶の市場はさらに勢いを失い、市場価格の低下を招きました。一方で消費者の間では食に対する安心・安全志向が高まり、お茶も同様に高品質の生産物が求められました。それは手間暇かけて出荷したお茶を低価格で取り引きされる状況を生み、私の中で生産者価格と市場価格のアンバランス的な感覚が拭えませんでした。

 そこで、流通の視点を変えてみることにしたのが海外進出のきっかけです。日本は人口減少とともに緑茶の市場回復は難しいと感じていました。そこで、国の補助金を活用してアメリカを中心に海外の市場調査や商談会に参加しました。ジャパニーズティーはすでに健康志向の高い層に受け入れられており、高価格で取り引きされていましたが、求められているのはやはり安全性でした。風味も大切ですが安全性が重要な付加価値で、有機栽培でないと売れないことを確信しました。また、抹茶が特に人気があることも分かりました。

茶畑と乗用型摘採機

社長が大切にされていること

 私たちの茶畑は無農薬栽培です。欧米と相互確認している有機JAS認証を取得しており3年以上、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない有機栽培を実践しています。農水省が認めた登録認定機関による検査を受け、病害虫の発生などによる生産量の減少リスクや土壌の管理など手間もかかりますが、輸出型産地形成に向けた必要な取り組みでした。抹茶の原料になるてん茶の栽培面積を増やし、2017年にてん茶加工工場、21年には抹茶工場と直販店を併設した新事務所を構えました。さらに昨年は世界の市場を開拓しようと、地元の5生産者と鹿児島オーガニックティー協議会を立ち上げました。

社長にとって経営とは

 霧島茶は鹿児島県のブランド茶です。お茶の魅力を発信するのはまず地元で始めることが大切だと考えています。商売はひとりでは成り立ちません。さまざまな業種の方とのめぐり会いが新しい可能性を生みます。地元のお茶問屋さんはもちろん、地元のカフェやお菓子屋さんともお取り引きしていて、地域の活性化につながればと思っています。22年には茶畑の緑と霧島連山を眺めながら霧島茶とお菓子を楽しめ、ゆったりと過ごせる貸切空間「霧茶床」をオープンさせました。最近は体験型ツアーが人気で、インバウンドを含めた地域の新たな観光資源として期待されています。

霧茶床

医療人材紹介事業「よかルート」にひと言

 私の農園では貴重な労働力として外国人材を活用していますが、こちらの採用などは管理組合さんからのご紹介です。県内の医療人材不足も恒常化しており、「よかルート」さんのように信頼できる紹介業者を活用するのは、人材確保のひとつの選択肢だと思います。今後も社会の課題解決の一助として成長されることを願っています。

インタビュアーの声

 鹿児島県は全国で2位のお茶(荒茶)の産地です。その一翼を担いながら、地元の伝統的な産業で新たな視点を持ち積極的に市場を開拓されている姿に力強さを感じました。地域との交わりを大切にされ、霧島に強い愛情を持たれていることが伝わってきました。座右の銘は『茶魂』。柔和な笑顔で生産から商品化まで多くの情熱を注いでおられる思いがとても印象的でした。